ハーモニー
「就労」からこぼれた「何か」を見過ごさない。
ここには、面白くて楽しい話題が溢れている。
- #東京都
- #幻聴妄想かるた
- #リサイクル
- #清掃
- #内職
「幻聴妄想かるた」という商品を聞いたことがありますか?これは、精神障害を持っている方の言葉そのものをかるたにして遊ぼうと企画されたもので、今回取材した就労継続支援B型事業所「ハーモニー(運営:特定非営利活動法人やっとこ)」様が発売されています。商品が生まれた背景や根底にある考えなど、お話を聞かせていただきました。
01 利用者さんの「居場所」でありたい。
新澤さん:
ここは以前、地域のお年寄りや障害のある方を集めて食事等の提供をしていたボランティア団体だったのですが、その中の精神障害の方々の居場所として就労継続支援B型を1995年から開設しました。今はリサイクルショップを開き、公園の清掃や内職なども行っています。 開設した頃は、国の施策として障害のある方たちが「働ける」環境を整えていこう、というタイミングだったんですが、やっぱりある程度高齢になっている方や重度の障害を持っている方は「そもそも働きづらい」という課題があったんです。で、そういう人たちがいかにして「働く」以外のところ含め、地域でイキイキと健康的で豊かに暮らしていけるか、がテーマでしたね。国全体の流れが就労にフォーカスしたがゆえの、行き着いたところというか。
新澤さん(施設長・精神保健福祉士・サービス管理責任者)
ですので、意識していることは「間口を広く、敷居を低く」です。例え利用者さんがあまり通えないとしても、障害者手帳を持っていなくても、受診していなくても、何らかの支援を受けられるようにしたい。来ても疎外感をなるべく感じないよう、広い利用者層を想定して作ってきました。作業しなくても知り合いの方と交流してゆっくり休憩するために来てもらっていいですし、とりあえずこの場に参加してもらって、「居場所」があるということを感じてもらうことを重視していますね。
02 小さな記録が、大きな気づきに。
戸島さん::
来てもらうことのハードルを下げたいので、うちは何時に来て何時に帰ってもらってもいいんです。なので、スタッフとしては利用者さんに対応するスケジュールを事前に組みにくいんですが、勤怠をクラウドで管理できるノウビーがすごく活躍してくれていますね。以前は来た時間・帰った時間を利用者さんに手書きで記入してもらっていて、記入漏れや字が読めないというようなトラブルもあったのですが、それも無くなりました。
また、利用者さんが一人のスタッフに「体調が悪い」と伝えたとしても、パパっと記録すればいいので、すぐにそれがスタッフみんなに共有できるのも便利です。スポット的に記録を把握するんじゃなくて日々の情報を細かく把握するようになると、利用者さんの変化がすごくよく分かるんです。「1か月前はこんなに具合悪かったのに、徐々に元気になってきてるな」とか、変化の遷移が時間の流れの中ですごく見えるようになりました。
新澤さん:
書いてる内容自体は「今日はヘビメタを聴いてた」とか些細なことでも、精神疾患の方の心の中を知りたい我々としては判断基準として大きな要因になったりすることが多いので、日々の小さな記録を残しておくことってすごく大事だなと改めて思わされましたね。
戸島さん
03
「宇宙人に会った」
「UFO見た」を、かるたにして遊ぼう。
新澤さん:
リサイクルショップ事業の他に私たちが独自で作っているものがあって、それが「幻聴妄想かるた」です。これは精神障害を持つ方のエピソードをかるたにしたものなんですが、「宇宙人に会った」とか「UFOを見た」などの話って、一般的に病気が重くなった、病院に行かなきゃってなる可能性もあるじゃないですか。うちはそれと違って「すごいね」って言って聞くんです。本当に話してくれる内容がファンタジーとしてとても面白いので、2009年に商品化に至りました。最初は批判や抵抗があるのかなという懸念もあったのですが、実際周りの人も喜んでくれて。今でも週1回のミーティングでエピソードの話し合いをしていて、今までに3作品を発売しています。
販売はもちろん、学校やいろんなイベントに行って実演したり、講演するなどの活動もしていて、メディアにも取り上げてもらったこともありますよ。また、年に数回、地域で「かるた大会」も開催していて、ご近所の方やいわゆるサブカルチャー好きな人達がたくさん集まるんです。そういった人との交流にもつながって、とても大事なコンテンツになっていますね。
04
目に見えないものこそ、
見つめ続けていたい。
戸島さん:
日々のコミュニケーションも大事ですし、ノウビーのおかげで以前よりも利用者さんの些細な情報を知る機会が増え、スタッフ間の情報交換も盛んになりました。以前まではスタッフそれぞれ仕事を終えたら帰っちゃうことが多かったのですが、「今日あの人何してたかな?」っていう話し合いの時間が増え、ミーティングが活性化したんです。それを個別支援計画にも落とせますし、属人的じゃなくて組織として情報が行き渡るようになったと感じます。そこはずいぶんと変わったのではないかと思います。
新澤さん:
この業界全体としては就労にどうしても目が向きがちですが、利用者さんの話しを聞いていると「もっと働きたい」「工賃をたくさん稼ぎたい」ではなくて、「楽しく暮らしたい」とか「おいしいものを食べたい」っていう気持ちも結構あるんですね。だから、就労からこぼれ落ちてきたものを見過ごすことなく、ちゃんと見ないといけないな、と。働くことだけじゃなくて人としての根本的な楽しさや価値を感じてもらえるようにしていきたいですね。
フォトギャラリー
- 法人名: 特定非営利活動法人やっとこ
- 事業所名: ハーモニー
- 住所: 〒154-0017東京都世田谷区世田谷3-4-1アップビル2F