Thumbnail for article: 処遇改善加算見込額の計算方法を3ステップで解説|2024(令和6)年度報酬改定対応

処遇改善加算見込額の計算方法を3ステップで解説|2024(令和6)年度報酬改定対応

コラム
更新日:2026年02月19日
処遇改善加算報酬改定各種加算の取得方法請求事務(国保連請求)経営者・管理者
目次
処遇改善加算の「見込額」とは
見込額計算の目的
2024年6月からの変更点
【3ステップで計算!】処遇改善加算見込額の計算方法
ステップ1:報酬総額(総単位数)を算出する
ステップ2:加算率を乗じて見込額を算出する
ステップ3:月額賃金改善要件と比較・確認する
障がい福祉サービス別の加算率一覧表
訪問系サービスの加算率
日中活動系サービスの加算率
児童系サービスの加算率
居住系サービスの加算率
サービス別の計算シミュレーション
例1:放課後等デイサービス(定員10名)
例2:生活介護(定員30名)
例3:居宅介護(訪問系)
計算ミスを防ぐチェックリスト
よくある計算ミス
計算前の確認リスト
記事のまとめ:見込額を正確に計算して計画書を作成しよう

※この記事は2025年12月時点の情報で作成しています。

処遇改善加算とは、福祉・介護職員等の処遇改善を通じて、賃金改善を行うための手当(報酬)です。

賃金の改善を進めることで人材の採用・定着につなげることが目的となります。

障がい福祉サービスで処遇改善加算を取得する際、多くの事業所で必要となるのが見込額の計算です。

見込額を正確に計算できないと、計画書の提出段階でつまづきやすく、賃金の支給や実績報告で数字の辻褄が合わなくなるリスクも生じます。

また、2024年度の報酬改定により、旧3つの加算区分は要件と加算率を組み合わせた4段階の新しい加算区分に一本化され、事業所は自らの取得区分を前提に見込額を考える必要があります。

本記事では、2024年6月の報酬改定後の新しい処遇改善加算(福祉・介護職員等処遇改善加算)について、見込額の計算方法を3ステップで分かりやすく解説します。

実際のシミュレーション例も交えながら、見込額計算の全体像と要点を押さえ、実務で迷いやすいポイントを明確にしていきます。

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5-p6

処遇改善加算の「見込額」とは

処遇改善加算の「見込額」とは

処遇改善加算の見込額は、これから作る計画書や賃金説明の基準になる数字です。

加算を取る前に、月(または年度)でどれくらいの処遇改善加算が入りそうかを先に見立てておくと、計画書に記載する根拠がそろいます。

その結果、実績報告で数字の辻褄を合わせやすくなり、求人票で賃金の目安を示す際の土台にもなります。

2024年度の報酬改定で、加算区分や加算率の扱いは整理・見直しが入っているため、従来の加算区分のまま計算しないことが大切です。

見込額がズレると、月々の賃金改善の説明も崩れていきます。

社労士 涌井好文のコメント:

職員の待遇改善は、優秀な人材の確保やモチベーションアップにもつながるため、積極的に改善を図ることが必要です。国も処遇改善加算の制度を設け、介護や福祉サービスに従事する方の待遇改善を後押ししています。処遇改善加算においては、見込額の計算が必要となっています。報酬改定に伴い、制度が大きく変更されているため、当記事を通して正しい見込額の計算方法を把握してください。

見込額計算の目的

見込額計算の目的は、作り方を押さえて何となく目安を出すことではありません。目的は、賃金改善の根拠を数字で示すことです。

賃金改善のため、加算取得に必要な計画書へ賃金配分による支給予定額の根拠を示し、求人票で手当額の目安を明示するために計算します。

処遇改善計画書への記載義務

処遇改善計画書で処遇改善の設計(賃金改善の配分や支給方法など)を決め、賃金改善の配分を確定させるには、まず見込額を把握することが必要です。

所定の様式で処遇改善計画書を作成し、初めて算定する月の前々月末日までに指定権者(都道府県知事等)へ提出します。

計画書では賃金改善の内訳(基本給・手当・一時金)を整理して記載します。賃金台帳・給与明細は、保管しておきましょう。記載内容の根拠となる資料は2年間保存する取扱いとされています。

参照:厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について 」p10-p11

計画書の具体的な作成手順や、キャリアパス要件・職場環境等要件などの詳細については「【障害福祉サービス】令和6年度処遇改善加算の要件・申請方法を解説」にて詳しく紹介しています。

申請から実績報告までの6つのステップや、必要書類の保存義務についても解説しています。

求人票への明示

求人票に「処遇改善手当:月額○万円(見込み)」など明示すると、求職者は待遇のイメージがつきやすく、応募の後押しになります。

見込額を根拠に目安を示しておけば、面接時の説明もぶれにくくなります。

ただし、利用者数や算定状況で金額が変動することがあるため、見込みや算定状況により増減などの記載があると安心です。

参照:法令検索「職業安定法 第5条の3労働条件等の明示」

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

社労士 涌井好文のコメント:

求人票は、業種や職種を問わず、求職者が採用後の待遇のイメージを掴むために用いられる重要なものです。ただし、求人票に虚偽の記載を行うと、行政指導や企業名の公表にもつながってしまうため、求職者の関心を惹きたいからといって、見込みと大きく異なる処遇改善手当の記載などは控えましょう。また、2024年4月以降、募集時に明示すべき労働条件が追加されているため、こちらへの対応ができているかも確認することが必要です。

2024年6月からの変更点

2024年6月の報酬改定で、従来の「処遇改善」「特定処遇改善」「ベースアップ等支援」の旧3加算区分は、要件と加算率を組み合わせた4区分の新しい処遇改善加算に一本化され、あわせて加算率も引き上げられています。

なお、介護保険の同名加算区分とは制度・対象サービスが異なるため混同しないよう注意が必要です。

「福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ~Ⅳ)」に一本化

これまで別々に運用されていた「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」は、要件と加算率を組み合わせた4区分の「福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰ~Ⅳ)」に一本化されました。

そのため、計画書や実績報告も新加算での区分が前提で整理され、旧加算区分とは構造が異なるため、区分の取り違えや見込額のズレが原因で賃金改善の配分が後から合わなくなることもあるため注意が必要です。

まずは自事業所がどの区分を算定するかを確定し、その区分の要件と加算率に合わせて見込額・賃金改善の配分方法を組み立てましょう。

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

加算率の引き上げ

障がい福祉の現場で働く方々の賃金の改善を進めるため、処遇改善加算の加算率は引き上げられました。

制度側の狙いは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへ確実につながるようにすることとなります。最終的に現場の賃金改善へ確実につなげる狙いがあります。

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

介護保険の「介護職員処遇改善加算」とは名称・対象サービスが異なる

名称が似ているため混同しやすいのですが、障がい福祉サービスの「福祉・介護職員等処遇改善加算」と介護保険の「介護職員等処遇改善加算」は別制度です。

根拠となる法令・通知、対象となるサービス体系、提出先や様式の扱いもそれぞれ異なるため、介護保険の資料を参照して計画書や見込額を作ると、要件の取り違えにつながりかねません。

計算や書類作成に入る前に、まず障がい福祉(障がい児)支援向けの通知・様式になっているかを確認し、指定権者から示されている提出案内に沿って進めましょう。

制度の混同や要件の取り違えは、修正の手間がかかるだけでなく、運営上の大きなリスク要因となります。

こうしたリスクを最小限に抑え、日々の業務負担を減らすための具体的な対策をまとめた資料(無料)をご用意しました。確実で効率的な運営体制づくりのために、ぜひご活用ください。

実地指導で指摘される前に知るべき事業所の「6つのリスク」と予防策

参照:厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」

【3ステップで計算!】処遇改善加算見込額の計算方法

【3ステップで計算!】処遇改善加算見込額の計算方法

処遇改善加算の見込額は、「処遇改善加算を除いた報酬総額(総単位数×単価)」に、取得する区分の加算率を掛けて算出します。

ポイントは、以下3点となります。

  1. 総単位数に処遇改善加算を入れない
  2. サービス種別と区分で加算率を取り違えない
  3. 最後に月額賃金改善要件を満たす賃金配分になっているか確認する

この3点を押さえておけば、計算ミスはかなり減らせます。

ここからは、実際に「総単位数の算出→加算率の適用→月額賃金改善要件の確認」の順に、3ステップで見込額を出していきましょう。

社労士 涌井好文のコメント:

処遇改善加算の見込額の計算については、自ら計算を行うほかに、Webサイトなどで提供されているシミュレーションなどを用いる方法もあります。ただし、このようなシミュレーションの利用は、目安の把握に留めるべきであり、実際の見込額は自ら計算しなければなりません。単純な計算ミスも見られるため、計算結果についてダブルチェックやトリプルチェックが可能な体制を構築しておくと良いでしょう。

ステップ1:報酬総額(総単位数)を算出する

1ヵ月に請求する基本報酬や各種加算・減算を集計し、総単位数を求めます。

ここでは処遇改善加算そのものを含めません。

例えば、生活介護であれば、日数と利用者数を掛けた基本報酬に送迎加算などを加算し、減算があれば差し引いて合計します。

総単位数に地域区分の単価(例:1単位=10円)を掛けると報酬総額(円)になります。

【計算式】

基本報酬 +加算-減算=総単位数

 ▼ 総単位数×地域単価 (10円)=報酬総額

参照:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準 1」

ステップ2:加算率を乗じて見込額を算出する

求めた報酬総額に、自事業所が取得する加算区分(Ⅰ~Ⅳ)の加算率を掛けると処遇改善加算の単位数が算出されます。

その単位数に単価を掛けると、月間の見込額(円)が出ます。この時点で賃金改善に使える額かを把握できますので要件を満たすかも確認しましょう。

また、加算率はサービス種別ごとに異なるため、まずは自事業所の区分を確認しましょう。

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

ステップ3:月額賃金改善要件と比較・確認する

新加算では、支給額の一部を毎月の基本給や決まって支払われる手当に充てる月額賃金改善要件が設けられています。

計算した見込額をこの月額賃金改善要件と照らし合わせ、賃金改善割合や配分ルールが満たされているかを確認します。

計画書には賃金改善の内訳も記載するため、ここで配分方法を固めておくことが大切です。

参照:厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)」p4-p5

障がい福祉サービス別の加算率一覧表

障がい福祉サービス別の加算率一覧表

福祉・介護職員等処遇改善の加算率は次のとおりです。

表中の「Ⅰ~Ⅳ」は加算区分が高いほど加算率が大きくなり、満たすべき要件も厳しくなります。

数値は令和6年6月時点の公表値であり、実際の算定では最新の通知を確認してください。

加算率の把握は収益確保の第一歩であり、安定した事業運営には、これらの加算をどう組み合わせて全体の収益力を底上げしていくかという戦略が欠かせません。

knowbeでは、就労継続支援A型・B型特有の経営課題にフォーカスし、着実に収益を伸ばすためのノウハウをまとめた資料(無料)をご用意しました。

ぜひ今後の運営にお役立てください。

新規開拓ノウハウ×受入キャパ拡大 就労継続支援A型・B型の収益最大化 完全ガイド

社労士 涌井好文のコメント:

処遇改善加算の加算率は一律ではなく、サービスごとに複数の加算率が設定されています。加算率が高い区分は、要件も厳しくなっているため、加算のために要するコストと受けられるメリットの比較検討が重要となるでしょう。高い加算率の適用を受けたとしても、そのためにあまりにも多くのコストが必要となるようであれば、見直しが必要となるかも知れません。事業所の実情を把握し、無理のない運用を心掛けましょう。

訪問系サービスの加算率

訪問系は、提供回数や時間帯で単位が動きやすく、月ごとの見込額も異なります。

まずは自事業所が算定している訪問系サービスを確認し、該当する加算率や区分を確認しましょう。

サービス名

居宅介護

41.7%

40.2%

34.7%

27.3%

重度訪問介護

34.3%

32.8%

27.3%

21.9%

同行援護

41.7%

40.2%

34.7%

27.3%

行動援護

38.2%

36.7%

31.2%

24.8%

重度障害者等包括支援

22.3%

16.2%

13.8%

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

日中活動系サービスの加算率

日中活動系は、営業日数と平均利用者数が見込額に直結します。

ここでは、生活介護や就労系などのサービスごとに加算率を確認し、区分(Ⅰ~Ⅳ)に合う数値を当てはめます。

サービス名

生活介護

8.1%

8.0%

6.7%

5.5%

自立訓練(機能訓練)

13.8%

13.4%

9.8%

8.0%

自立訓練(生活訓練)

13.8%

13.4%

9.8%

8.0%

就労選択支援

10.3%

10.1%

8.6%

6.9%

就労移行支援

10.3%

10.1%

8.6%

6.9%

就労継続支援A型

9.6%

9.4%

7.9%

6.3%

就労継続支援B型

9.3%

9.1%

7.6%

6.2%

就労定着支援

10.3%

8.6%

6.9%

自立生活援助

10.3%

10.1%

8.6%

6.9%

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

日中活動系、特に就労継続支援A型・B型においては、こうした加算の積み上げに加え、生産活動のスコア評価や利用者の受入体制強化が経営安定のカギを握ります。

「営業」と「体制強化」の両面から収益を最大化するための戦略をまとめた資料(無料)をご用意しました。 加算の見込額計算とあわせて、事業全体の収益構造を見直すためのガイドとしてご活用ください。

新規開拓ノウハウ×受入キャパ拡大 就労継続支援A型・B型の収益最大化 完全ガイド

児童系サービスの加算率

児童系は、児童発達支援・放課後等デイなどで加算率が異なります。

指定申請上のサービス種別と照らしながら、該当する加算率や区分を確認しましょう。

サービス名

児童発達支援

13.1%

12.8%

11.8%

9.6%

医療型児童発達支援

17.6%

17.3%

16.3%

12.9%

放課後等デイサービス

13.4%

13.1%

12.1%

9.8%

居宅訪問型児童発達支援

12.9%

11.8%

9.6%

保育所等訪問支援

12.9%

11.8%

9.6%

福祉型障害児入所施設

21.1%

20.7%

16.8%

14.1%

医療型障害児入所施設

19.1%

18.7%

14.8%

12.7%

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

居住系サービスの加算率

居住系は、共同生活援助などで類型(包括型/外部サービス利用型等)によって率が変わります。

まずは自事業所の類型や加算区分を整理し、同じ名称でも別表になるケースがないか確認します。

サービス名

共同生活援助(介護サービス包括型)

14.7%

14.4%

12.8%

10.5%

共同生活援助(日中サービス支援型)

14.7%

14.4%

12.8%

10.5%

共同生活援助(外部サービス利用型)

21.1%

20.8%

19.2%

15.2%

施設入所支援

15.9%

13.8%

11.5%

短期入所

15.9%

13.8%

11.5%

療養介護

13.7%

13.5%

11.6%

9.9%

障害者支援施設が行う生活介護

10.1%

8.4%

6.7%

障害者支援施設が行う自立訓練(機能訓練)

12.5%

9.9%

8.1%

障害者支援施設が行う自立訓練(生活訓練)

12.5%

9.9%

8.1%

障害者支援施設が行う就労移行支援

10.7%

8.9%

7.1%

障害者支援施設が行う就労継続支援A型

10.5%

8.7%

6.9%

障害者支援施設が行う就労継続支援B型

10.5%

8.6%

6.9%

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

参照:厚生労働省「令和7年度分の福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する通知 別紙1」p1

居住系サービス、特にグループホームは人員配置やユニット展開の工夫次第で、収益性が大きく変わる事業モデルです。

業界平均を大きく上回る「利益率15%」を実現し、安定した多店舗展開を行うためのノウハウをまとめた資料(無料)をご用意しました。

処遇改善加算の算定と並行して、高収益な運営体制を構築するための参考書としてお役立てください。

【収益最大化】利益率15%を実現する障害者グループホームのユニット展開と配置ルール

なお、グループホーム(共同生活援助)における類型ごとの詳細な加算率や要件については「障害者グループホーム(共同生活援助)の処遇改善加算を解説|令和6年度(2024)報酬改定」にて詳しく紹介しています。

新設された人員配置体制加算など、処遇改善加算とあわせて確認したい報酬改定のポイントも解説しています。

サービス別の計算シミュレーション

サービス別の計算シミュレーション

以下では、代表的なサービスについて実際の数値を使って見込額を試算します。

単価や加算率は地域区分や報酬改定によって変わるため、自施設の条件に応じて数値を置き換えてください。職種や勤務形態で賃金配分は変わるため調整します。

例1:放課後等デイサービス(定員10名)

前提条件:

  • 1日の利用者数:平均8名
  • 営業日数:月20日
  • 基本報酬:500単位/日
  • 送迎加算:54単位/日(往復)
  • 取得加算:処遇改善加算Ⅰ(13.4%)
  • 地域区分:1単位=10円

ステップ1:総単位数の算出

  • 基本報酬:500単位 × 8名 × 20日 = 80,000単位
  • 送迎加算:54単位 × 8名 × 20日 = 8,640単位
  • 総単位数:88,640単位

ステップ2:見込額の算出

  • 報酬総額:88,640単位 × 10円 = 886,400円
  • 処遇改善加算見込額:886,400円 × 13.4% = 118,777円/月

ステップ3:職員1人あたりの賃金配分例

  • 職員数5名の場合:118,777円 ÷ 5名 = 約23,755円/人・月

※実際は職種・勤務形態により配分額を調整します。

参照:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準 1」

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

例2:生活介護(定員30名)

前提条件:

  • 平均利用者数:25名/日
  • 営業日数:20日/月
  • 基本報酬:600単位/日
  • 日中支援加算:50単位/日
  • 地域区分単価:1単位=10円
  • 取得区分:加算区分Ⅰ(8.1%)

ステップ1:総単位数の算出

  • 基本報酬:600単位 × 25名 × 20日 = 300,000単位
  • 日中支援加算:50単位 × 25名 × 20日 = 25,000単位
  • 総単位数:300,000+25,000 = 325,000単位

ステップ2:見込額の算出

  • 報酬総額:325,000単位 × 10円 = 3,250,000円
  • 処遇改善加算見込額:3,250,000円 × 8.1% = 263,250円/月

ステップ3:職員1人あたりの賃金配分例

  • 常勤換算5人の場合:263,250円 ÷ 5人 = 約52,650円/人・月

※実際は職種・勤務形態により賃金配分額を調整します。

賃金配分の基準となる職員数の計算については「常勤換算の計算方法4STEP|欠勤や育児休暇の扱い・人員配置基準など」にて詳しく紹介しています。

非常勤職員の労働時間の集計ルールや、有給休暇・欠勤時の取り扱いなど、正確な『常勤換算数』を算出するための手順をご確認ください。

例3:居宅介護(訪問系)

前提条件:

  • 月間支援回数:600回
  • 1回あたり単位(30分未満):256単位
  • 地域区分単価:1単位=10円
  • 取得区分:加算区分Ⅰ(41.7%)

ステップ1:総単位数の算出

  • 支援単位数:256単位 × 600回 = 153,600単位
  • 総単位数:153,600単位

※この例は、その他の加算・減算がない前提です。実際は算定している加算・減算を合算します。

ステップ2:見込額の算出

  • 報酬総額:153,600単位 × 10円 = 1,536,000円
  • 処遇改善加算見込額:1,536,000円 × 41.7% = 640,512円/月

ステップ3:職員1人あたりの賃金配分例

  • 常勤換算5人の場合:640,512円 ÷ 5人 = 約128,100円/人・月

※訪問系は稼働(提供実績)にばらつきが出やすいため、賃金配分は勤務状況(常勤換算・提供実績等)に応じて調整します。

計算ミスを防ぐチェックリスト

計算ミスを防ぐチェックリスト

見込額は、計画書・求人票・実績報告まで同じ数字が追いかけてきます。

ここでズレると、後から修正が連鎖して負担が増え結果として賃金改善額は不足することもあります。

特に計画書や実績報告の締切前は、計算の順番・加算率や加算区分の選択・単位単価の取り違えが起こりがちです。

そこで本章では、計算に入る前に確認する項目を固定し、誰が見ても同じ結論にたどり着ける形でよくある計算ミスやチェックリストについて説明します。

社労士 涌井好文のコメント:

どれだけ気をつけていても、計算ミスが起きる可能性をゼロにはできません。しかし、可能性は限りなくゼロに近づけることが理想となります。見込額の計算において良くある誤りを把握し、その点について特に注意を払えば、計算ミスの起きる確率は大きく減らせます。単純な計算ミスはもちろん、二重計上や単位単価の誤りが良く見られるため、重点的にチェックを行いましょう。

よくある計算ミス

処遇改善加算の計画作成時に見込額を過少に見積もった結果、実際の加算額に対して賃金改善額が下回ると、算定要件を満たさないものとして返還の対象になり得ます。

※ただし、年度途中で不足に気づいた場合、賞与等の一時金により追加で賃金配分をして要件を満たせば、賃金の返還を求めない取扱いとして差し支えないとされています。

また、経営悪化などで賃金水準(基本給など)を引き下げざるを得ない局面では、「特別事情届出書」の提出が必要となる場合があり、賃金の引下げについて適切に労使の合意を得る等の手続きも求められます。

こうした事態を避けるためにも、以下の3つの計算ミスを潰し、見込額を守れる数字を作成して賃金の配分設計を進めましょう。

参照:厚生労働省「参考2 福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A」p5、p7

ミス1:処遇改善加算自体を報酬総額に含めている

処遇改善加算は土台となる報酬に上乗せする加算です。

総単位数や報酬総額を作る段階で処遇改善分まで足してしまうと、そこにさらに加算率を掛けて二重計上になります。

正しい手順は、処遇改善加算を除いた総単位数(基本報酬+各種加算−減算)を先に確定し、その後に加算率を乗じて見込額を算出します。

【計算例】

誤り: (基本報酬 + 処遇改善加算) × 加算率 = 二重計上

正解: (基本報酬 + 各種加算 - 減算) × 加算率 = 正しい見込額

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p5

ミス2:サービス種別を間違えて加算率を適用

加算率はサービス種別ごとに異なるため、サービスを取り違えると見込額がズレます。

正しい方法は、指定通知書や指定申請のサービス種別で「正式なサービス名」や加算区分、地域区分を確認し、該当する加算率表を選ぶこと。

迷う場合は自治体窓口や厚労省資料で確認しましょう。

参照:厚生労働省「令和7年度分の福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する通知 別紙1」p1

社労士 涌井好文のコメント:

処遇改善加算では、提供するサービスに応じた加算率が設定されていますが、そのサービス区分自体の誤りもまま見られます。そのような誤りはあり得ないと考えるかもしれませんが、正確な区分を確認せず、思い込みのまま進めてしまうケースもあり得るのです。必ず公的な資料を確認し、不明な点や判断に迷う点があれば、窓口に直接問い合わせましょう。これは、処遇改善加算だけでなく、事業所運営全般にいえることであるため、確認を習慣づけることが必要です。

ミス3:地域区分の単位単価を間違える

総単位数が合っていても、単位単価を誤ると報酬総額(円)がそのままズレます。

特に、複数拠点がある事業所様や、他事業所の単価を流用した場合に起こりがちです。

正しい方法は、事業所所在地の地域区分(1級地〜7級地、その他等)を自治体資料で確認し、その区分に対応する1単位単価を使うことです。

参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p17

お住まいの地域の区分(1級地~その他)や具体的な単価については「就労継続支援B型の地域単価は?地域区分、1単位あたりの単価【令和6年度報酬改定】」にて詳しく紹介しています。

令和6年度改定で区分が変更された自治体の一覧や、サービス種別ごとの単価表を確認し、計算ミスを防ぎましょう。

計算前の確認リスト

計算そのものより、前提の取り違えがミスの原因になることもあります。

いったん数字を出してからだと、計画書や賃金配分まで修正が連鎖して工程が増えることもあります。

まずは、チェックリストで前提を固定し、確認してから計算に入りましょう。

チェック

確認事項

⬜︎

対象サービス種別を正しく把握しているか 

⬜︎

取得する加算区分(Ⅰ~Ⅳ)を決定しているか 

⬜︎

1ヶ月の総単位数に処遇改善加算を含めていないか 

⬜︎

地域区分に応じた単位単価を使用しているか

⬜︎

サービス別加算率表から正しい%を適用しているか

⬜︎

月額賃金改善要件を満たす配分になっているか確認したか

参照:厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)」p13-p38

こうした事前のチェックで手戻りを防ぐことは、業務時間を守るためにも非常に重要です。

さらに一歩進んで、運営全体に潜むリスクを回避し、日々の業務負担を軽減するための具体的な手法をまとめた資料(無料)をご用意しました。

効率的で安心できる事業所づくりのために、ぜひあわせてご覧ください。

実地指導で指摘される前に知るべき事業所の「6つのリスク」と予防策

記事のまとめ:見込額を正確に計算して計画書を作成しよう

記事のまとめ:見込額を正確に計算して計画書を作成しよう

処遇改善加算は、福祉・介護職員等の処遇改善を通じて、人材の採用・定着につなげるための加算であり賃金改善につながります。

見込額は「とりあえず出す数字」ではなく、計画書・求人票・実績報告まで一貫して説明できる基準として、正確に押さえる必要があります。

2024年6月の改定で制度は一本化され、サービス種別と取得区分を確定し、地域区分の単位単価と加算率、要件(賃金改善)を確認したうえで、見込額を計算して賃金配分の設計につなげていきます。

しかし、仕組みや計算式を頭では理解していても、それを毎月の実務としてミスなく運用し続けることは容易ではありません。

knowbeでは、こうした複雑な計算や法改正への対応をシステムで仕組み化し、現場の負担とリスクを減らすお手伝いをしています。

現状の運用方法に少しでも迷いや負担を感じていらっしゃる場合は、貴事業所に合った進め方を一緒に考えさせていただきますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

knowbe

社労士 涌井好文のコメント:

待遇が悪い事業所は、離職率が高くなり、人材の定着も望めません。また、待遇が悪ければ、そもそも人材を採用すること自体が困難となります。現在の日本は、業界や職種を問わない人手不足が深刻化しています。そのなかでも、介護や福祉分野の人手不足は特に深刻です。そのため、介護や福祉分野における待遇改善は、喫緊の課題であるといえるでしょう。処遇改善加算を活用し、待遇改善を図るためには、正確に見込額を計算することが欠かせません。障害福祉に特化したシステムの導入は、正確な計算の大きな助けとなるため、ぜひご検討ください。

Author
著者
徳橋修翔
北海道在住の社会福祉士。地域福祉に関わる団体で、地域住民・行政・福祉関係者と連携しながら地域課題の解決に取り組む。障がい福祉・地域支援を中心に、制度、実践、連携の観点から記事を執筆。公益社団法人北海道社会福祉士会所属。
Supervisor
監修者
涌井好文(わくい よしふみ)
涌井社会保険労務士事務所代表。平成26年に神奈川県で社会保険労務士として開業登録後、企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を展開。障害福祉サービス事業所の運営や手続きに関する相談など、福祉分野での支援も行っている。退職や転職に関するトラブル相談にも応じ、労使双方が働きやすい環境作りに尽力。また、近年はWebを活用した情報発信にも注力し、記事執筆や監修を通じて幅広い知識を提供している。
関連記事
同じタグから記事を探す
処遇改善加算報酬改定各種加算の取得方法請求事務(国保連請求)経営者・管理者