

虐待防止措置未実施減算を完全解説!2024(令和6)年度報酬改定【障がい福祉】
※この記事は2026年2月時点の情報で作成しています
「令和6年度の報酬改定、結局うちは何をすればいいの?」「忙しくて書類まで手が回らない……」 経営者・管理者の皆様は、そんな不安を抱えてはいませんか?
2024年度の報酬改定により、虐待防止措置が義務化されました。未実施の場合、基本報酬が1%減額される「虐待防止措置未実施減算」が課せられます。
今回は、減算回避に必須の4つの運営基準や、身体拘束廃止未実施減算との同時対策について、元就労継続支援B型の職員である宮島桃香が詳しく解説します。監修は社労士の涌井好文です。
不備による減算リスクを減らし、健全な運営を実現しましょう。
虐待防止措置未実施減算とは?令和6年度報酬改定での変更点
令和6年度(2024年度)の報酬改定により、虐待防止措置が未実施の場合に、虐待防止措置未実施減算が適用されるようになりました。
虐待防止措置は令和4年度から義務付けられていましたが、今回の改定で「体制を整えていない事業所は報酬を減算する」と厳格化されています。
ここからは、減算の背景から対象サービス、適用期間、影響額までを詳しく解説します。
令和4年度から義務化済み:令和6年度改定で「未実施は1%減算」が導入された背景
虐待防止措置は令和4年度から運営基準上の義務となっています。令和6年度の改定では、確実な実施を促すために減算が設けられました。
具体的には、以下の体制がない場合に適用されます。
- 虐待防止委員会の設置・開催
- 委員会の内容の周知
- 虐待防止のための研修の実施
- 虐待防止措置の担当者の配置
未実施の場合、すべての利用者様の基本報酬が1%減額されます。 運営基準を遵守し、適切な支援体制を整えることが不可欠です。
参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p12
参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p12
なお、令和6年度の報酬改定では、虐待防止措置と同様にすべての事業所で「業務継続計画(BCP)」の策定も義務化され、未策定の場合は減算対象となります。
BCP未策定減算の要件や、感染症・自然災害に備えた具体的な年間運用スケジュールについては「【障がい福祉】BCP未策定減算とは?1%・3%の減算額と過去分まで減算されるリスクを回避する運用対策」にて詳しく紹介しています。
事務負担を減らすためにも、各種委員会の開催や研修計画とあわせて対策を進めましょう。
【重要】すべての障がい福祉サービスが減算対象
虐待防止措置未実施減算は、すべての障がい福祉サービスが対象となります。どのサービスも、基準を満たさない限り減算される点にご注意ください。
サービス種別 | 対象サービス例 |
|---|---|
訪問系 |
|
日中活動系 |
|
就労系 |
|
居住支援系 |
|
訓練系 |
|
相談系 |
|
減算の適用期間:事実が発生した翌月から改善が認められた月まで
虐待防止措置未実施減算は、運営基準を満たしていない事実が確認されたタイミングから開始されます。
- 開始時期: 虐待防止措置が行われていない事実が生じた月の翌月から
- 終了時期: 改善計画を提出し、実際に改善が認められた月まで
なお、改善計画は虐待防止措置が行われていない事実が生じた月から3ヶ月後に都道府県知事などに報告する必要があります。
つまり減算が適用されると、元の報酬額に戻るまでに3ヶ月以上を要するので、早めに体制を整えましょう。
減算の影響額シミュレーション
虐待防止措置未実施減算は、基本報酬の1%が差し引かれます。一見小さく見えますが、すべての利用者様の基本報酬が減算されるため、年間を通すと大きな損失となります。
たとえば、基本報酬が300,000単位の事業所の場合、減算額は以下のとおりです。
項目 | 算出例(基本報酬が300単位の場合) |
|---|---|
月間の減算単位数 | 300,000単位×1%=3,000単位 |
月間の損失額 | 3,000単位×10円=30,000円 |
年間の損失額 | 30,000円×12ヶ月=360,000円 |
このケースは1単位=10円で計算していますが、地域区分やサービス種別によって単価が上がる場合、実際の損失額はこれ以上に膨らみます。
虐待防止措置への対応は、利用者様の安全と職員が安心して働ける環境を守るために不可欠です。
しかし、日々の業務に追われるなかで、新たな体制構築や書類作成を負担に感じる事業所も少なくありません。
そこで、knowbe(ノウビー)では運営指導(旧実地指導)で指摘されやすいリスクと予防策をまとめた資料(無料)をご用意しました。
法改正に合わせた体制整備を効率的に進め、安定した運営基盤を築くためのガイドブックとしてご活用ください。以下のボタンより無料でダウンロードいただけます。

減算回避に必須!4つの運営基準

虐待防止措置未実施減算を回避するには、国が定める4つの運営基準をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると減算対象になるため、注意が必要です。
この章では、忙しい開所前後でも迷わず体制を整えられるよう、各要件のポイントを解説します。
1.虐待防止委員会を設置し、年に1回以上委員会を開催すること
まずは虐待防止委員会を設置し、年に1回以上は委員会を開催しましょう。
のちほど詳しく説明しますが、身体拘束適正化委員会と合同で運営することも可能です。事業所単位で開催することが難しい場合は、法人単位での開催も認められます。
2.虐待防止委員会の結果を全職員に周知すること
委員会で話し合われた内容は、必ず全職員へ共有しましょう。ここでいう「全職員」とは、パートやアルバイト、派遣スタッフも含まれます。
委員会を開催していても、結果の周知や共有が不十分と判断された場合、減算の対象となる可能性があります。
周知の方法として、以下のような手段が考えられます。
【虐待防止委員会の結果の周知方法の例】
- 議事録や周知文を作成し、職員が内容を確認できる状態にする
- 書面の供覧や記録への確認サインなど、周知したことが客観的に分かる方法を取る
- ミーティングなどの機会を活用し、委員会での決定事項や注意点を職員に説明する
出席していなかった職員にも確実に内容を伝えられる仕組みづくりが重要です。
参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p12
3.虐待防止のための研修を年に1回以上実施すること
全職員を対象とした、虐待防止のための研修を年に1回以上実施しましょう。
自治体によっては、新規職員が入職した際にも研修を実施することが義務付けられています。
管轄自治体の最新の資料を確認し、ローカルルールにも対応しましょう。
参照:新宿区「新宿区障害福祉サービス事業者等集団指導」p12
4.虐待防止措置を適切に実施するための担当者を配置すること
虐待防止措置を責任を持って進める担当者を決めましょう。
担当者は、虐待が発生した際(疑いがある場合も含む)に自治体に通報したり、職員へ助言を行ったりします。
担当者の氏名を運営規程や重要事項説明書に明記すれば、対外的にも虐待防止に向けた体制が整っていることを証明できます。
参照:こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」p19
このように担当者の配置や書類への明記は必須ですが、事業所の運営には知らず知らずのうちに減算対象となるリスクが他にも潜んでいます。
実地指導で指摘されやすい「見落としがちな6つのリスク」と予防策をまとめた資料(無料)をご用意しました。 虐待防止体制の整備とあわせて確認し、運営体制に死角がないか総点検しておきましょう。

運営指導(実地指導)で指摘されないための書類整備術

運営指導では、虐待防止措置を実施したかどうかが書類で判断されます。
減算を避けるには、実施を証明する根拠資料を提示しなければなりません。ここからは、運営指導で指摘されないための書類整備術を解説します。
委員会議事録:開催日・検討内容・職員への周知を記録する
運営指導で「虐待防止委員会を設置しています」と口頭で伝えても、議事録がなければ実施していないとみなされます。
委員会議事録には、以下の内容を具体的に記載してください。
- 委員会の開催日時・場所・出席者の氏名
- 検討した内容
- 職員からの相談・報告への対応状況
- 職員への周知方法
議事録には「資料を掲示した」「チャットで共有した」など、職員への周知方法も書きましょう。
研修実施記録:日時・内容・受講者を明記する
虐待防止研修も年に1回以上の実施が義務付けられています。研修の実施記録には、以下の項目を記載しましょう。
- 研修の実施日時
- 研修の内容・使用した教材
- 参加者リスト
- 欠席した職員へのフォロー方法
研修実施記録には、当日欠席した職員へのフォロー方法も忘れずに記入してください。
「後日改めて研修を行った」「研修で使った資料を配布した」などの記載がないと、運営指導で指摘されるおそれがあります。
参照:厚生労働省「II. 虐待を防止するための日常の取組について ①」p6
運営規程:虐待防止措置に関する事項を記載する
運営規程には、虐待防止措置に関する事項を記載する必要があります。具体的には、以下の4点を明記しましょう。
- 虐待の防止に関する担当者の選定
- 成年後見制度の利用支援
- 苦情解決体制の整備
- 職員に対する虐待の防止を啓発・普及するための研修の実施(研修方法や研修計画など)
- 虐待防止委員会の設置等に関すること
参照:こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」p18
運営指導(実地指導)当日の具体的な流れや、虐待防止関連以外に準備すべき書類のチェックリストについては「実地指導とは?監査との違いや当日の流れ・必要書類・事前対策について解説【障がい福祉サービス】」にて詳しく紹介しています。
監査へ切り替わる基準や、よくある指摘事項を事前に把握し、万全の対策を講じておきましょう。
また、knowbeでは運営指導で指摘される前に知っておきたい6つのリスクと予防策をまとめた資料(無料)をご用意しました。不備のない体制を効率的に整えるために、ぜひ本資料をダウンロードしてご活用ください。

事務負担を減らす「身体拘束廃止未実施減算」との同時対策

虐待防止措置未実施減算と身体拘束廃止未実施減算は、どちらも「利用者様の権利を守る」という目的が共通しています。
この章では、虐待防止措置と身体拘束適正化を同時に対策する方法をご紹介します。
事務負担を減らし、利用者様の支援業務に集中できる体制を整えましょう。
身体拘束「適正化」と虐待「防止」の相違点を整理
虐待防止措置と身体拘束適正化の相違点は、以下のとおりです。
虐待防止措置 | 身体拘束適正化 | |
|---|---|---|
主な目的 | 障がい者の権利擁護・虐待の防止 | 安易な身体拘束の禁止・適正な運用 |
主な要件 |
|
|
対象サービス | 全サービス | 自立生活援助、就労定着支援、計画相談支援を除く全サービス |
減算率 | 全サービス:1%減算 |
|
参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p13
参照:船橋市「令和7年度指定障害福祉サービス事業者等集団指導」p49
虐待はいかなる理由があっても禁止される一方で、身体拘束は緊急やむを得ない場合に限り、厳格な条件下で認められる場合もあります。
身体拘束が例外的に認められる「切迫性・非代替性・一時性」の3要件や、実地指導で指摘されないための実施記録の具体的な記入例については「身体拘束廃止未実施減算を解説|令和6年度報酬改定の対応ポイントと対策」にて詳しく紹介しています。
適正化のための指針整備のポイントも確認し、虐待防止対策とあわせて確実に対応しましょう。
身体拘束適正化委員会と一体化して設置・運営するメリット
虐待防止委員会と身体拘束適正化委員会を一体化するメリットは、以下の3つです。
- リスクの根っこを同時に解決できる
- 議事録作成や周知のコストを半分にできる
- 職員の判断基準が統一され、現場が混乱しない
運営指導では、虐待防止や身体拘束適正化を含む権利擁護に関する指針・委員会の実施状況・記録が確認されます。
書類をバラバラに管理するよりも、「当事業所では権利擁護の観点から関連資料を一体的に整理しています」と示したほうが、行政からの信頼につながるでしょう。
参照:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p12
事務負担を50%削減する「年間スケジュール」の組み方例
事務負担を最小化するための年間スケジュール例を作成しました。既存の会議に組み込み、様式をセットにすることがポイントです。
【統合版】権利擁護マネジメント・年間計画例
月 | 実施内容(統合委員会・研修) | 作成すべき根拠資料 |
|---|---|---|
4月 |
| 統合委員会議事録(1枚) |
6月 |
| 研修実施記録・受講者名簿 |
10月 |
| 統合委員会議事録(1枚) |
12月 |
| 研修実施記録・アンケート |
2月 |
| 統合委員会議事録(1枚) |
コンプライアンス遵守と業務効率化の両立は、安定した事業所運営に欠かせません。しかし、法改正への対応や日々の書類作成に追われ、利用者様の支援業務にあてる時間が削られてしまうこともあります。
knowbeでは、事業所に潜む6つのリスクと予防策をまとめた資料(無料)をご用意しました。以下のボタンより無料でダウンロードいただけますので、ぜひ事業所の体制強化にお役立てください。

万が一、減算要件に該当してしまったときのリカバリー策

「虐待防止措置の要件を満たせていなかったらどうしよう…」と不安になる経営者の方は少なくありません。
運営指導で虐待防止措置の不備を指摘されたり、未実施に気づいたりした場合、速やかに過誤申立の手続きを行い、減算の影響を最小限に抑えましょう。
速やかな「過誤」手続きと改善計画書の提出手順
運営基準を満たしていないことが判明した場合、過去の請求を取り消し、正しい単位数を請求する必要があります。
減算が適用される場合、すでに満額で受け取った報酬との差額を返しましょう。手続きの流れは以下のとおりです。
- 事実確認と自治体への報告
「委員会の開催実績がなかった」などの事実を把握した時点で、速やかに自治体へ報告しましょう。
- 過誤申立の実施
自治体と調整のうえ、すでに支払った請求明細書の取り下げを行います。
- 報酬の再請求
減算を適用した単位数で再請求を行いましょう。
- 改善状況の報告
事実が生じた月から3ヶ月後に、改善計画書を自治体に提出します。
手続きをしないと減算期間が延びるため、速やかに取り組みましょう。
参照:厚生労働省「過去分調整額等の請求方法についての記載」p3
こうした減算のリカバリーや返金には多大な労力がかかるため、日頃から運営基準違反に該当しないよう体制を整えておくことが何より重要です。
一見順調な事業所でも見落としがちな「事業停止」や「返還金」のリスクについて、予防策をまとめた資料(無料)をご用意しました。
取り返しのつかない事態になる前に、自社の運営体制に潜むリスクを把握するガイドとしてお役立てください。

なお、一度支払われた請求を取り下げる過誤や、請求内容の不備で差し戻される返戻(へんれい)の具体的な対応フローについては「返戻とは?事業所への影響・通知対応の流れ・エラーコード例や対処法など」にて詳しく紹介しています。
よくあるエラーコード(EG03、ED01など)別の対処法や、再請求のスケジュールについても整理して確認できます。
指定取消リスクを避けるための「指定権者(自治体)」への報告相談
虐待防止措置未実施減算が続く場合、行政から改善指導が入ります。
指導に従わない場合、特別な事情がある場合を除き、指定取消となるかもしれません。
減算要件に該当した際は、早めに自治体に報告・相談しましょう。
実際に虐待が疑われるケースを発見した場合も、まずは自治体の窓口へご相談ください。
参照:こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」p6-7
よくある質問(FAQ)

ここからは、虐待防止措置未実施減算についてよくある質問をQ&A形式で解説します。ご自身の事業所が減算要件に該当していないか確認してみましょう。
Q. 研修は外部講師を呼ぶ必要がありますか?
外部講師を招く必要はありません。事業所内での勉強会や、他機関が実施する研修への参加でも基準を満たせます。
運営指導では、研修を実施した事実を証明することが重要です。
研修で使用した資料と参加者全員の氏名を記した受講名簿をセットで保管し、いつでも提示できるようにしておきましょう。
参照:こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」p21
Q. 全職員には、パート・アルバイト職員も含まれますか?
正規職員だけでなく、パート、アルバイト、派遣スタッフもすべて対象です。
直接利用者様を支援する職員に限らず、調理員、事務員、運転手など、利用者様と接点を持つ可能性のある全職種が対象に含まれます。
当日欠席した職員には動画視聴などの代替措置を行い、全員分の受講記録を漏れなくそろえましょう。
参照:こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」p26
Q. 多機能型事業所の場合、サービスごとに委員会が必要ですか?
多機能型事業所や同一敷地内の複数サービスを運営している場合、委員会を一つにまとめて合同開催することが認められています。
サービスごとに開催する手間を省きつつ、議事録内に各サービス固有の課題や対策を明記することで、事務負担を最小限に抑えられます。
Q. オンライン会議や動画教材の使用は「研修」として認められますか?
オンライン会議や動画教材の使用も認められます。全員を同時刻に集めるのが難しい場合でも、録画した研修の個別視聴やテレビ電話での委員会開催が可能です。
ただし、受講後のアンケート回収や出席簿の整理を行い、職員が内容を理解したことを客観的に証明できる書類を残しましょう。
記事のまとめ

虐待防止措置未実施減算を回避するには、以下の4つを実施する必要があります。
- 虐待防止委員会を設置し、年1回以上委員会を開催すること
- 虐待防止委員会の結果を全職員に周知すること
- 虐待防止のための研修を年1回以上実施すること
- 虐待防止措置を適切に実施するための責任者を配置すること
これらを確実にクリアし、議事録や研修受講記録などの根拠資料をそろえましょう。身体拘束廃止対策とセットで実施すれば、多忙な現場の負担も軽減されます。
しかし、日々の業務に追われるなかで、複雑な書類を管理するのは難しいかもしれません。そこで活用したいのが、障がい福祉サービスに特化した記録・請求ソフト「knowbe(ノウビー)」です。
knowbeは日々の支援記録が請求書類と連動し、請求業務をサポート。
事務作業の負担を大幅に軽減し、利用者様と向き合う時間を創出します。法改正にも迅速に対応し、パソコンが苦手な職員でも直感的に使いこなせる操作性を実現しています。
knowbeでは、安定した事業所運営と質の高い支援を両立するためのノウハウをまとめた資料(無料)もご用意しました。ぜひ事業所の体制づくりにお役立てください。





